高市政権の戦略分野に思う

高市政権の戦略分野が決まったそうです。


人工知能から海洋まで17項目あるそうで、各項目ごとに担当大臣を決めて推進するという意欲的なものですが、私の疑念としては「多すぎる」ことと「方向性」が挙げられます。

まず、17項目全部に注力するのは、戦力の分散ではないか。
兵法の基本として、戦力の逐次投入は御法度のはずですが、これだけ多分野に戦力を振り向けるのも集中性に欠けると言う意味で同じではないかと思います。
高市さんご自身のように寝る間を惜しんで働けばわかりませんが、それを前提とするのは危険です。

さらに気になるのは、これらを追求する先に浮かんでくるビジョンが「もう一度あの輝きを取り戻す」と言うものである点です。
もちろんそうできればいいとは思いますが、もう現在の日本の国力ではそれは叶わぬ高望みではないでしょうか。

国力が衰え、少子高齢化が進む我が国をどんな国に作り直すのか。
かつてのような科学技術立国で世界のものづくりをリードし、自由貿易の先頭に立って再び市場に君臨する輝かしい未来を追求するのが果たして身の丈にあったビジョンなのか。
原点に帰ってもう一度考え直すべき時ではないか、と思います。

今、過度の円安を背景に、日本には世界中から観光客が押し寄せてきています。
彼らの目に映る日本は、「できたらこの国に住みたい」と思わせるような魅力ある別天地であるらしく、現に日本に土地や不動産を求める外国人がうなぎ登りに増加しています。
その理由としては、美しい国土と共に、日本人が育んできた穏やかで繊細な文化と気風があると思われます。
それらは、宇沢弘文の言う「社会的共通資本」と言う分厚い公共財の魅力です。
我々は、このような公共財を守り抜き、世界中から羨ましがられる「いつまでも住みたいと思える国」の維持発展を第一に、新しい国づくりに向かうべきではないでしょうか。

そして、日本は例外的なほど自然災害の多い国ですから、そこからの復元力に富んだ(社会システムを含む)国土設計を欠かすことはできません。
そこにも公共性の重視が唄われるべきです。
つまり、輸出経済一辺倒から脱却し、ある程度の自給自足能力を回復した上で、国民が日々の生活を楽しめるような国を作ること、そのような方向に向けた戦略分野とすべきであると考えます。

その基本には農業の復活、(今でも世界トップクラスの)医療システムの充実、そして一極集中を排した教育システムの見直しが掲げられるべきと思うのです。
その上で、復元力に富んだエネルギー産業と(レアアースを含む)競争力のある新資源の開発に注力したら良いのです。

今後の展開を注視したいと思います。

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