吉本家崩壊
吉本ばななのnote『クラウディクラウドファンディング』が話題になっていたので、500円払って読みました(有料note初体験)。
要するに、「戦後最大の思想家」故吉本隆明の一家が今や崩壊寸前であるという告白です。
彼女の言い分は以下の通り。
- ウチの母親は支配的な毒親だった(その実例を山ほど)
- 私(ばなな)は若くして逃げたが、姉は捕まってしまい、結婚もせずに親の面倒を見て生きてきた
- 父も母と闘って力尽きた被害者だ
- 姉と母は共依存関係(アダルトチルドレン)
- 彼女は猫に救いを求めた
- 両親の医療費や生活費、猫の諸費用(餌代や手術代など)はほとんど私が負担したが、姉は湯水のように消費している
- 姉の稼ぎはイラスト・漫画の収入と自宅の居酒屋化だったが、今はどちらも休業
- 気がついたら家はゴミ屋敷で、猫だけでなくたくさんのネズミが棲み着いている
- 家の中はホームレスが百人くらいいるような悪臭で息もできない
- 姉はネズミにかじられて全身蜂窩織炎になり、医者から入院しないとこのままでは死ぬと言われているが、猫がいるからと入院は拒否し続けている
- 私は貯金も底をつきかけているし、姉もいうことを聞かないので、もう縁を切る
- このnoteの売り上げは姉への最後の経済的支援とするつもり
いやはや。
大思想家の家庭がこんなふうにして崩壊するのを見るのは、かつてのファンとしていたたまれない感じです。
でも、かつてのファンたちは、生きているとしても皆いい年をしたおじいちゃんばかりだから、有料noteなんて新しいものに近づけるだろうかと心配です。
しかし、読み終わって思ったのは、これはばななの言い分であり、かなり一面的だということです。母親が毒親だ、というところから出発していますが、そうなるにはそれなりの事情があったはずです。
私の知るところでは、吉本隆明の奥さんは知人の妻でした。
知人と言っても、一緒に雑誌を作っていたいわば同志です。
そして、長い間三角関係が続き、吉本本人がこれは本当に辛かったと言っていたくらいですから、奥さんのストレスも相当なものだったはずです。
多分、吉本ではない他の男なら、もっと早くに安易な形で決着をつけていたのでしょうが、「思想の原理主義者」吉本隆明にはそれができなかった。
・・・これが第一。
次に、この奥さんは文学少女だったらしく、小説や歌などを自作していたそうで、吉本のような思想を仕事にしている人と交わることに価値を見出していたと想像されるのですが、これが裏目に出たようなのです。
それは吉本が奥さんの文學的活動を許さなかったことで、「家に2人表現者がいると家庭は成り立たない」からと言われていたそうです。
何と身勝手な言い草、と思いますが、これが吉本隆明の「思想の原理主義者」たるところなのでしょう。
それでも奥さんは同好会などで作歌活動を続け、歌集を出したりもしていたようなのですが、吉本はそれを手に取って見ることもしなかったと言われています。
小さいやつ・・・と思ってしまいます。
・・・これが第二。
しかし、さらに遡ると、吉本隆明がなぜこのような原理主義者(面倒臭いやつ)になってしまったのか、という問題に突き当たります。
多分、それは彼が敗戦の衝撃を真正面から全身で受け止めたことに原因するでしょう。
彼は敗戦時20歳。一番不安定な時期でした。
思想で身を守るには原理主義者たらざるを得なかった。
私はそれこそが一番本質的な論点であると思います。
そういえば、同じく敗戦時20歳だった三島由紀夫は違う意味で面倒なやつでした。
・・・これが第三。
こうして日本の敗戦は一つの衝撃波となって最終的に吉本家を崩壊に導いた・・・というのが私の感想です。
決して吉本隆明はばななの言うような単なる被害者ではなく、崩壊の原因であり、同時に戦争の被害者でもあったと思うのです。
それにしても、お姉さんの自分を徹底して顧みない猫との生活は、見事なものと思います。
これも一種の「その世」ではないでしょうか。
蜂窩織炎からの回復を心からお祈りします。

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