ネット実名制

イギリスが「ネット実名制」に踏み切り、匿名アカウントは禁止されたというニュースがありました。
これに対し、ネット民からは反対の声が上がっていますが、イギリス政府は動じる気配は全くないそうです。

SNSでのヘイト発言を始め、その弊害については目に余るものがありますが、投稿される全てのコンテンツをいちいち検査して削除要請を行うといった方法では到底対処できないのは明らかです。
しかし、いきなり実名投稿しか許さないとなると、政治的な意見表明はほとんど不可能になるでしょう。

この問題は昔から議論されてきたものですが、私はもし自分の提案が採用されていたなら・・・という思いを禁じ得ませんでした。

当時、私は某電子認証会社の社長をしていましたが、ある携帯電話会社の認証事業部門と合併して新しい会社を作ることを画策していました。
その流れで先方の専務さんと面談した際に、新会社ができた暁に何か新事業としてやりたいことはあるかと聞かれ、持論を展開したことがあります。

私はネットの掲示板が荒れやすいのは、匿名性 anonym そのものに無責任性が内在しているからであり、ネットの大衆化が進めばいずれ匿名性は排除されるはずだと述べました。
しかし、匿名性が不都合だからといって実名性 real-name 一本で行くことも無理があるから、
 仮名性 pseudo-name
に切り替えるのがリーズナブルであり、それを先取りした動きを取りたいと申し上げました。

仮名性というのは、実名以外で投稿することを許すが最終的には誰が書いたか分かる仕掛けを持った記名システムのことです。私は携帯電話を入手するとき必ず本人認証を行うので、それをその人の電子証明書として活用する方法を考えていました。
具体的には、世界の認証局とブラウザーメーカーが集うCAB : CA Brouser Forum に提案し、全てのブラウザーに電子認証機能を持たせるのです。
そして、ネット経由で投稿する時には、そのテキストに(自動的に)電子署名を付するよう義務化するのです。
(PCから投稿する場合でも電子証明書が入っている携帯を併用することになります)

こうすると、例えば掲示板に仮名で書き込みをしても、いざとなれば付された電子署名を解読して書き込み者の実名を知ることができます。
もちろん電子署名の検証は誰にでも許すわけではなく、法執行機関に限るわけですが、いざとなれば身元が割れる仕掛けであることを知れば、自ずと抑制の効いた投稿になるはずだ、そして市民向けの電子証明書発行ビジネスは我々の有望な新規事業になるだろう・・・と力説しました。

これがどう受け止められたか分かりませんが、実際には合併話自体が流れてしまったので日の目を見ることはありませんでした。
今、イギリスのニュースを見ていて、イフの世界をつい考えてしまいました。

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