原発「汚染水」海洋放出に関する疑問

七月二十四日、東電と日本政府は放射能汚染水を海洋に放出しました。これに関して、汚染水を「処理水」と言うべきだったとして某大臣が叱られていました。政府は
 汚染水=汚い水
 処理水=きれいな水
とでも言いたいのでしょう。
野党もこの点は全く同じです。 

今回放出されたのはデブリ(崩れた燃料棒)に触れた地下水です。
これがどれくらい汚いか、数値で議論しても素人のわたしたちはよく理解できません。
しかし、現代の科学技術ではデブリの取り出しはほぼ不可能であることを知れば、恐ろしいくらいの汚染源であるらしいとは想像がつきます。何しろ、事故以来13年が経過したこれまでに、採取できたデブリはたったの数グラムなのですから。
1号炉から3号炉までのデブリの総量は800~1000トンあります。これにほとんど近づくこともできない東電が、政府発表のように30年で全部取り出すことなど無理ではないかと思わざるを得ません。

でも、ALPS(多核種除去設備)という処理装置で「きれい」にして放出するんでしょ、トリチウムが除去できないそうだが、それについてはホリエモンも安全じゃないと言ってる奴は中学まで戻った方がいい、と言っているじゃないですか、と反論する人がいるでしょう。
しかし、ALPSを通してもトリチウム以外にも除去できない高濃度の放射性物質が12核種あり、やはりデブリに触れた汚染水は単なる冷却水などとはまったく違うと考えなくてはならない。
また、そのトリチウムは水の分子構造と同じなので原理的に除去できないわけですが、だから水と同じで安全だ、ではなく、普通の水と同じ分子構造であるがゆえに容易に体内の組織に取り込まれ、長いものでは15年間も体内にとどまり、その間トリチウムが発するベータ線によって内部被爆を受けるのです。どこが安全なのですか。
「直ちに影響はない」かもしれませんが、確実に(日本人だけでなく人類の)癌の発生率を上げるはずです。

四の五の言わず、IAEAがきれいと言っているのだから問題ないという人は、IAEAが推進側の機関であることを忘れたのでしょうか。3.11の頃、わたしたちはIAEAの話には眉に唾をつけて聞いていたのではなかったでしょうか。

じゃあどうすればいいのか、汚染水は溜まり続ける一方じゃないか、という人に。
現在の科学技術で実行可能な防御策はチェルノブイリでやったような「石棺」です。これをやればいいのです。海洋放出はこれと比較すると格段に低コストであるが故に、東電と日本政府はこちらを選んだわけですが、コストが安いのは「コストの外部化」、つまり環境に押し付けているからだと思います。

環境に押し付けたツケはいずれ払うとしても、自分はその頃には草葉の陰だから知ったことではないという高齢者よ、お前の行き先は草葉の陰じゃなくて地獄だぞ。

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