和田秀樹『100歳の壁』を読む
和田秀樹『100歳の壁』を読みました。
この人、70歳の壁とか80歳の壁とか、よく似た本を色々書いてますが(60歳は『60代からの見た目の壁』、90歳は『うまく老いる 楽しげに90歳の壁を乗り越えるコツ』)、どれも似たようなものだろうと思い読んだことはありませんでした。
しかし100歳となると一体どんなことが書かれているのか気になって、とうとう読んでみることにしました。
100歳の壁という以上、70歳の壁とか80歳の壁とはどこが違うか、著者の着眼を知りたかったのです。
しかし結論から言うと、100歳に固有の論点は何ーんにもなし!(笑)
人生100年の時代とか、そんな枕詞として使われているだけでした。
しかも内容は「既刊本の再編集」と本の末尾に非常に小さな字で書かれているではありませんか!
もっと真面目にやれー!!!
ただ、彼の主張そのものは意味のあるもので、それには感心しました。何歳の壁でもいいから一冊くらいは目を通しておくと良いと思いました。
そのポイントは「足し算」です。
従来の医療は、血圧が高いと言っては降圧剤を飲ませ、コレステロール値が高いと言っては抗コレステロール薬を飲ませ、卵は食べるな塩分は摂取するなと言い、血糖値が高いとこれもクスリで下げようとする。
どれも、高い値を<正常値>に引下げることばかりしてますが、これは「引き算」の医療だと批判しています。なぜなら「引き算」の医療で得られる結果は生気のないヨボヨボ・どんよりした、生活の質QOLの低い人生だからです。
こんな医療は役に立たないだけでなく、危険だと指摘していますが、同感です。
こうなってしまった一つの理由は、<正常値>に引き下げる方法論やデータがアメリカ人を対象に定められたものから来ているためだそうで、確かにあの超肥満体のアメリカ人を見ると彼らなら引き算医療するのが正解に思えます。
では著者はどんな健康法を勧めているのかと言えば、「足し算」です。
- タンパク質などの栄養をもっと足す。
- 足りなければサプリメントを足す。
- 家にいて座り続けるのはやめ、軽くてもいいから運動を足す。
- 出なくなった性ホルモンを足す(ホルモン補充療法)。
- 健康のために楽しみを控えず、逆に楽しいことを足す。
興味深かったのは、クスリも「足し算系」のものを服用することを勧めている点でした。
例に挙げていたのは、セロトニン増強薬です。
痛みを取るには鎮痛剤が一般的ですが、セロトニンが増えれば(脳の興奮にブレーキをかけ)痛みを感じにくくなるため、SNRIといったセロトニン増強薬を用いることもできるようになり、この方が安全だという主張です。というのは、従来の睡眠薬や鎮痛剤には物忘れや足のふらつき、活力低下などの副作用があるからです。
また、認知症の治療薬「アリセプト」にも、記憶や思考に関わる神経伝達物質アセチルコリンを「足す」働きがあるので、脳が少し元気になるそうです。
その他、耳が遠くなれば我慢せずに補聴器を使い、目が見えにくくなったら白内障の手術でレンズを入れ、尿もれが気になるなら尿もれパッド付きパンツを使うなど、便利な先進技術を「足す」ことで快適な老人生活が可能だと述べています。
そして、一人暮らしの方が長生きすると述べているのも意外でした。
同居家族に気を遣うことがストレスだから、とかそういう意味かと思ったらそうではなく、なんでも一人でしなくてはならないので、頭も含めた体全体を使うからだそうです。
独居老人OKだそうです。
ちなみに、著者はまだ63歳だそうですが、血圧も血糖値もかなり高く、普通ならそれらを下げるために薬漬けのはずですが、本人は<正常値>の概念を信じておらず、食べたいものを食べ楽しく元気に暮らせているのでこれで良いと言っています。
そうなのかもしれません。
ただ、もうすでに尿もれパッド付きパンツを使っているそうで、これには驚くとともに、彼のこのやり方で本当にいいのか疑問を感ぜざるを得ませんでした。
たしかに前立腺肥大の影響か、私も最近「突発性尿意」に悩むようになりましたが、それでもまだまだオムツの世話になるほどではありません。
私の14歳年下の和田さんが、もうそこまで行っているのは早すぎないでしょうか。これが本書を読んで私の抱いたただ一つの疑問です。
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