『日本国紀』を読了
百田尚樹『日本国紀』を読み終わりました(今ごろ(笑))。
「あの」百田だからきっとこんな本だろう、と私は勝手に想像していて、そのうち読めばいいやと思いながらズルズル伸ばしにしてきたのですが、そんな予想は良い意味で大きく裏切られました。
最近読んだ本の中でダントツに感銘を受けたのです。もっと早く読んでおくべきでした。
この本は日本の「通史」ですが、教科書的な読本ではなく、百田氏の感想が随所に散りばめられた「プライベート史観」です。しかし、史実を自分流に捻じ曲げて強引な解釈を施したものではなく、非常に冷静かつ客観的に記述していることにまず驚きました。
しかも、自分の解釈や想像を加えている箇所にはいちいち丁寧に断り書きがしてあり、誠実で謙虚な姿勢がよく表れていました。
これだけでも評価に値すると思います。
そればかりか、長い国の歴史を一つのストーリーとして語り上げているため、読んでいて退屈することがなく、500ページを超える大著を一気に読了することが出来ました。
内容に関しては、日本の歴史は誇るに足る立派なものであり、世界史においても類を見ない上質な水準にある、という主張がメインですが、読んでいてどれも腑に落ちるばかりか、いささかもどぎつい誇張が見られないことに意外な印象を受けました。
また、ありもしない話を尤もらしく引き合いに出して自説を擁護するようなことは、私の知る限りほぼなかったと思います。
百田氏ってもっとアグレッシブな論客だと思っていましたが、本書においては落ち着いた語り口の理性的な紳士でした。
きっと彼自身も、この本を自分の生きた証として大切に書き上げたのだと思います。
感心しました。
縄文時代から現代に至るまで、各時代の出来事と、その底流に見られる日本人の変わらぬものの考え方の指摘を併せて読み進むうちに、全てが必然と見えてくるところに本書のパワーを感じますが、それが遠い昔の話にとどまらず、現代の政治に直結してくるところが実に新鮮でした。
特に、敗戦後のGHQによる日本人の洗脳工作(WGIP : War Guilt Information Program)が現代日本にどれほど根深く影響しているかという指摘には、文字通り震撼させられました。
私の過去を振り返ってみても、自分では当時当然と思っていたことが実はWGIPで洗脳された結果だったかもしれないと思える節がたくさんあります。
一つの政治的立場を選択する前に、その正当性を歴史の流れの中に置いてみて判断するという作業は、本書のような史観なしにはなし得ないということを痛感しました。
今、日本は高市内閣が誕生し、新しい時代に向かって走り出そうとしています。
願わくば、日本人がこの機会にWGIPの洗脳から完全に抜け出せますように!
本書を多くの人にお薦めしたいと思います。
(付記)
本書のコラムで紹介されていた面白い辞世の句
太田南畝:今までは 人のことだと 思ふたに 俺が死ぬとは こいつはたまらん
十返舎一九:この世をば どりゃおいとまに せん香の 煙と共に 灰左様なら
(一九は遺体を洗わず火葬にしてくれと言い残し、火葬にしたら着物に隠してあった花火が炸裂して皆びっくりしたとのこと)
明るい死に方で、笑ってしまいました。
コメント
素晴らしい読後感に目が覚めました。
早速購入いたします。
彼の作品は読みやすくラストで胸が熱くなります。
一番好きなのは「風の中のマリア」です。
本書で言いたいことは言ったという思いでしょうが、生きているうちにロシアについて何か本格的なものを書いて欲しいと思います。本書では、終戦後のいわゆる「日ソ戦争」については全く触れられていませんが、日本の安全保障を論じる上で彼の国の危険性が依ってきたる背景を解き明かしていただきたいのです。
「風の中のマリア」読んでみます。ご教示いただき有難うございます。