戦争のリアル:水木しげる

『ウォーフェア』という映画が公開され、話題になっています。
イラク戦争を超リアルに描いたものだそうで、特に立体音響がすごいとか。
まるで戦場にいるような錯覚を覚えるそうです。

しかし、これが戦争のリアルだと言われると、日本の軍隊を経験した人は違うと言うのではないでしょうか。少なくとも、戦闘場面だけしか切り取っていないじゃないか、そんな感想が聞こえてきそうです。
そう思うのは、
 水木しげる『総員玉砕せよ!』(講談社文庫)
というマンガを読んだからです。
(水木さんによると、この内容の90%は実話だそうです。)

これを読むと、日本軍の兵隊レベルの日常がよくわかります。
「将校、下士官、馬、兵隊」という表現がありますが、日本軍は兵隊を大切にせず、軍馬以下の扱いをしていたようで、ただの一兵卒としてニューギニアに送り込まれ、無意味な戦闘で左腕を失った水木しげるさんはこれに対して深い恨みを抱いていたそうです。
なにしろ、毎日意味もなく殴られ、ろくなものも食べさせてもらえず、目的も意味も知らされずに行軍に駆り出されるわけですから。

人は殴られると心の底で深く傷つき、殴った相手のことは絶対に忘れません。
だから、私は絶対に人を殴るなと教えられてきましたが、日本の軍隊ではこれが意味もなく行われるのです。
例えば、どこかに出撃すると決まると、全員が整列させられ、いきなり上等兵などからビンタを食うわけです。このマンガでは、それが繰り返し嫌というほど描かれています。
いわゆる気合いを入れるというやつですが、殴られた方はたまったものではありません。

また、敵にやられて助かりそうもない兵隊からスコップで指を切断しろと命令される場面もありました。内地に遺骨として送るためだそうですが、まだ生きている人から指を切り離すなんて・・・と信じられない思いです。
しかし戦闘は続いており、躊躇する兵隊に上官は「早くしろ」と怒鳴りつけます。
こういう死に方をした兵隊がたくさんいたのだと思うと、たまらない気持ちになります。

極め付けが玉砕命令です。
私は玉砕というのは結果的に全員が戦死することだと思っていましたが、そうではなくて、玉砕せよ(=死ね)という命令なんですね。
だから、玉砕命令が下り、戦闘が行われ、そこで生き残ってしまうと命令違反になって見つかれば処刑されてしまうのだそうです。
せっかく生き延びても、味方の軍隊によって殺されてしまうというのはあまりに理不尽だと思いました。
マンガでは、内地の遺族には戦死したということにするから、という約束のもと、何人かが切腹させられてしまいます(実話だそうです)。

しかし、玉砕命令を出した(出させた)参謀は「自分は成り行きを見届けて報告する義務があるから」と言って死のうとせず、死ねという命令を発した者が生き残るのはおかしいじゃないかと兵隊と口論になり、マンガでは結局敵弾に当たって死にますが、水木さんによると、実際にはなんだかんだ言いながら生き延びて内地に戻ったのだそうです。

そうした馬以下の兵隊たちは、何かあれば猥歌を歌い、上官命令で「ピー屋」(慰安所)に行き、生えているバナナや芋を穴を掘って隠し持ち、自分達をいじめる古参兵に隠微な仕返しをし・・・そして、戦闘で無意味な死を強いられるのです。
これが多分日本軍の「戦争のリアル」だと思います。

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