『90歳、男のひとり暮らし』

高齢化時代を反映し、最近は90歳なんとかというタイトルの本が目白押しです。
私も何冊か読みました。
かの有名な『90歳何がめでたい』の佐藤愛子から始まり、精神科医の和田秀樹の90歳シリーズ数冊、黒井千次の『老いの深み』(帯に90歳とある)・・・
そして今回は阿刀田高『90歳、男のひとり暮らし』(新潮選書)を読んでみました。

この人は作家で、元ペンクラブ会長もしていた有名人だそうですが、私は読んだことありません。なんでも短編の名手だとか。
そういう方なので、さすがに文章は手練れの出来栄え、途中で(黒井千次のように)うんざりして投げ出すことはありませんでした。

彼の奥様は認知症で施設に入り、最近亡くなられたため90歳で男のひとり暮らしとあいなったのだそうですが、ちゃんと自炊し、規則正しく毎日の生活を送っているようです。それは大したものだと思いました。
杖は使っているそうですが、それで買い物もできるし散歩もできるし、日常生活に大した不便はなさそうです(掃除だけはヘルパーさんにやってもらっているとのこと)。

ちなみに、奥様はレビー小体型認知症にパーキンソン病を併発していたそうですが、私が以前述べたようにこの二つの病気は基本的には同じ病気です。

本書には、彼の趣味の言葉遊びや親父ギャグの話とか、百人一首やいろはかるたに関するうんちく、眠る前に源氏五十四帖の名前を「桐壺」から順に数えるとか、とても普通の90歳とは思えないエピソードが満載で、読んでいくうちにこんな博覧強記の90歳なかなかいないぞと思ってしまいます。
付き合いのあった作家たちに関する思い出話もたっぷりありました。
さすが元ペンクラブ会長。

ですが、私の知りたいのは90歳になった彼の心身の疲弊状態についてです。
朝起きる時の重苦しいひと時をどうやってやり過ごすのか、一人暮らしでやらねばならないことをどうしてもやる気にならないなんてことはないのか、寂しさに負けそうになる瞬間や生きる意欲が完全に失せる瞬間が訪れることはないのか、体調の衰える速さに気持ちが折れることはないのか、等々。
たしかにネクタイが結べなくなったとか、そんな話題も触れられてはいましたが、そんなの全然深刻じゃない。
もっとドロドロした気の滅入るような恐ろしい体験とかはないのか?と思うのです。

やっぱりこの人、私とは違うスーパーマンなのかもしれません。
そういう意味ではあまり参考にはなりませんでした。

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