デジテルウクライナと『孔子』
デジテルウクライナと言うNHKの番組を見ました。
今回のは2回目で、マリウポリで何が起きていたのかをネットや衛星からの情報を解析するオープン・ソース・インテリジェンス=OSINTを利用して究明したものです。
内容は、一言で言えば"吐き気がする"です。
そして、意外な本を連想しました。
井上靖『孔子』です。
この本は、孔子に付き添って戦乱の中国を旅した弟子の手記という体裁を取った「孔子伝」です。孔子は多くの門弟を抱えた当時の大知識人ですが、この小説では少数の選りすぐりの弟子たちと教団を作って各地を流浪していたとされています。
各地の有力者たちの食客として生活していたわけで、史実だそうです。
当時(紀元前五、六世紀)は春秋時代で、多くの国家が覇を競い、誕生しては滅亡するという変遷流転の時代でしたが、そこで生きた庶民の暮らしはひどいものでした。
農地は戦場となり、若者は徴兵され、家族は突然家から着の身着のまま追い出され、国が侵略されれば奴隷として遠くに連れて行かれるなど、生まれてきたことを嘆くしかない過酷な生活を強いられたようです。
孔子教団も有力者の庇護は受けていたものの、情勢が悪化すればそこから逃げださざるを得ず、絶えず辺りを伺うような緊張感と重圧の下で旅をしていました。
その辺の雰囲気がデジテルウクライナで再現されたロシア占領下のウクライナのそれに非常に良く似ていたのです。
占領者のやることがどちらもそっくりだと感じたわけですが、片や2,500年前、片や21世紀です。番組に出ていたウクライナの人が「まさか21世紀になってこんなことが起きるとは信じられない」と嘆いていましたが、私も本当にそう思いました。
そして、国際社会は援助はしているものの、事態を解決する決定打を打てずにいたずらに犠牲者が増えるがままにしています。
この2,500年の間に、人類の進歩は果たしてあったのでしょうか。
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