三浦敬三さんの本を再読

本棚を整理していたら、『98歳元気の秘密』という本が目に止まりました。冒険スキーヤーの三浦雄一郎さんの父親三浦敬三さん(1904-2006)の本です。
彼が98歳のとき、すなわち2002年発行なので、もう二十年以上前の本ですが、読み返したみたら色々発見がありました。

文学書などでは、歳を重ねることで理解力が深まり、以前とは違った読み方ができるようになることがよくありますが、この種の健康本でも似たようなことがあるんだと気づきました。
本書には食事や運動について詳しい記述がたくさんありとても参考になりますが、以下では、私が以前の読書で読み落としていた点についてまとめてみました。

1.人間の体は多くの人が考えているほど弱いものではない

この言葉は、コールドトレーニングで有名なヴィム・ホフのホームページに掲げられている
 "You are stronger than you think you are"
という文章を思い出させます。三浦敬三さんは、体力には「見かけの体力」と「本当の体力」の二種類があり、多くの人は運動らしい運動もしないで自分には体力がないと思い込んでいるが、これは見かけの体力に過ぎないと言います。本当の体力はしばらく(最低でも一ヶ月)トレーニングをしてみないとわからない、と。
人間は、意外としぶとくてなかなか死なない生き物だと思うことがよくあります。身内にも、施設に入って車椅子生活でほとんど動かず、それでいてもう二十年近く生きている人がいます。長生きすればいいというものではありませんが、こういう人がもしトレーニングをしたら・・・と想像してみることがあります。自分を甘やかして生きている人は自分の本当の体力を知らないという指摘は、とても新鮮でした。

2.医者にはかかるな

これはよく言われることですが、実際に医者に行かない人はあまりいません。多くの人は、何か起きるとすぐ医者に飛んで行きます。
私の知人で、リタイアしたとき、「これからの人生は名医を知っているかどうかで差がつく」といった人がいます。この人は健康診断を欠かさず、何か異変の予兆らしきものが見つかったらすぐ名医?に診てもらい、言われるままに色々な薬を飲み、手術したりしていますが、私のみるところあまり健康的な印象はありません。
三浦敬三さんは、若い頃に結核になったのをはじめ、色々な病気や怪我を経験していますが、滅多に医者には行かず、普段通りの生活をしているうちに治ってしまったそうです。彼によれば、徐々に体を動かせばたいがい治るのだそうで、「人間の体に備わっている回復力」(自然治癒力、免疫抵抗力)を信じていることがその原動力となっているそうです。骨折した時も、ギプスをしてもらいはしましたが、それを外すのは自己判断によったそうです。
しかし、何がなんでも医者にかからない手術しないのではなく、必要と思えばお世話になっているそうで、白内障も80代後半に手術してもらいよくなったと書かれていました。

3.歳を取ってからは入院するな

これは「医者にはかかるな」の続きのような話ですが、その背景には彼の奥さんの一件があります。八歳年下の奥さんはとても明るいお嬢様育ちの方だったそうですが、階段を踏み外して捻挫してしまい、三ヶ月ほど入院したところ痴呆になってしまったのだそうです。私の思うに、スキー三昧の生活を楽しんでいた三浦敬三さんのわがままで、奥さんを長期入院させてしまったようです。途中で見舞いに行ったらもう退院したいと言われたのに、まだ完治していないからと言う理由で(本当は自分がスキーに浸りたいために?)入院を続けさせたため、退院した時には旦那の名前も出ないすっかり別人になったしまったそうです。
その後も色々あり、奥さんは何度も入院し、とうとう病院から追い出されたため、敬三さんが介護しますが、最初の怪我から五年後に亡くなってしまいました。今でこそ、長期入院は認知症の元という理解が普及していますが、当時はそうでもなかったのでしょう。

4.一人になったら一人暮らし

奥さんを亡くし、一人になった三浦敬三さんは、一時子供と同居したこともありますが、何不自由なく世話をしてもらうことに耐えられず、その後独居老人として余生を送りました。「あれをしたら次はこれと、自分のリズムで暮らせる方が体にも良い」そうです。同感です。

5.歳を取ったら無理するな

これは決して自分の体を甘やかせよと言う意味ではなく、若い人と同じペースでやると体が壊れるので、無理せず自分のペースで時間をかけてやれ、と言う意味です。すぐ頑張り過ぎてしまう私には、身に沁みる忠告でした。

その他、参考になる内容が盛りだくさんの良い本だとあらためて思いました。

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