哲代おばあちゃん

『103歳、名言だらけ。』(中国新聞社)と言う本を読みました。
広島県在住の103歳(当時。今は104歳)のおばあちゃんの暮らしぶりを紹介した本で、かなり話題になり、最近ではドキュメンタリー映画まで制作されました(首都圏での公開はまだ)。
写真を見たら、103歳にしては明るく元気で丸々していて健康そうな姿に惹かれ、読んでみたくなったものです。
写真提供:中国新聞社


とても読みやすく、いい本でした。
この方は小学校の教員をされていた方で、結婚していましたが子供はなく、酒好きな旦那さんは彼女が83歳の時に脳梗塞で亡くなりました。
その時の様子がとても感動的でした。
最後は病院でしたが、こんなふうに書かれています。

亡くなる時、お酒を少し口に含ませてあげたんです。私の腕に抱いて。そうしたら、あがなええ顔したことないくらいににっこりしてね。こっくんって音までさせて。「早う家に戻ってようけ飲みましょうで」って言ったら、またにっこりして。しばらくして、静かにすーっと旅立っていきました。

この様子を見て、彼女は「やり遂げたと言うんかな、救われた気になりました」と述懐しています。
子供ができなかったことを引きずってきたのが、最後に腕の中で全部解消され、自分の人生が肯定された気になったそうです。
いい話だと思いました。

一人暮らしの哲代おばあちゃんの長寿の秘訣は、特に変わった努力や工夫があるわけではありませんが、意識して笑顔を絶やさないように努力し、人を笑わせることばかり考えていることと、食欲が旺盛で何でもたくさん食べることにヒントがありそうです。

家の前には長い坂があり、ここを行き来できるうちは大丈夫と言い聞かせて歩き続けているのも足腰の鍛錬になっているでしょうし、103歳の今でもシニアカー(電動三輪車?)を運転して墓参りなどに出掛けているのもすごいことです。

そして、教員を退職してから民生委員をしていたという経験が、人的なネットワークを作りその中に自分の居場所を持つコツを教えたように見えました。彼女の声かけで地域で生まれた「仲良しクラブ」の世話人的な役を今でも果たしているのはその一例です。ムードメーカーなんですね。

また、体力が衰え挫けそうになっても、自分で自分を励まし盛り上げて、それでもどうにもならない時には決め台詞の「仕方がナイチンゲール」で笑いに変えるそうです。

週のうち三日はデイサービスに行きますが、「職員さんに身を委ねるデイサービスは休息の時間」、家での時間は自分だけが頼りなので頭を常に緊張させてしゃんとするよう気をつけているとのこと。こんなところも健康長寿の秘訣なのでしょう。
さらに、毎日日記を付けるとスーッとするそうです。嘆くことにエネルギーを使わず、できた自分を褒めて、まだまだやれると自信に変えるのだそうです。

本書は取材記者による聞き書きなので、地方の人ののんびりした話し方が楽しげで、時々笑いながらあっという間に読み終わってしまいました。
手元に置いておいて、好きな時に目を通せば、常に何かしら発見がある、そんな本だと思います。
お勧めです。

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