ウォークレコーダーとエクサバイト
世相は一層殺伐としてきて、ニュースもテレビはもちろんネットもあまり見たくありませんが、不条理な事件が後を絶ちません。
もし自分が遭遇したらどうしよう、と考えると(今の私はあまり出歩かないにもかかわらず)不安になります。
とくに異常者と自分だけで、目撃者や証言してくれそうな人が皆無の場合が不安です。
そんな時、身に付けるドライブレコーダーのようなものがあったらいいなぁと思います。
ドライブレコーダーを装着し、車の後部窓ガラスに「録画中」のステッカーを貼って以来、あまり後ろにピタッと付かれることがなくなりました。
また、自分の運転から荒さが消え、穏やかで模範的な運転に変わってきたと思います。
何かあっても、録画データを提示すれば不条理な目にあう可能性が大幅に減ったような気がしています。
私の考えるドライブレコーダーならぬ「ウォークレコーダー」は、例えばメガネに装着する超小型のカメラで、撮影データは無線でスマホに送られ保存されます。
無線はBluetoothが便利と思います。
もともとBluetoothは音声のみでしたが、様々な「プロファイル」が開発され、現在の最新バージョンではたしか動画も転送できるはずです。
自分の目に映る光景を無断で録画することには、プライバシー上の問題があるかもしれませんが、ネットで公開させないよう法律的な縛りをかけたり、公開する場合は個人が特定されないようぼかしをかけるなどの対策が可能です。
こんな装置を夢想していて、ふと昔読んだ小説を思い出しました。
服部真澄『エクサバイト』
これはこんな小説です。
2025年。記録媒体の小型化が飛躍的に進み、人々はみな超小型記録メディア“ユニット”を身につけている。これにより、人間は一生のうちに見聞するすべての情報を記録できるようになっていた。
時流に乗り、このユニットを使用した番組制作で大成功を収めた映像プロデューサー・ナカジにも転機が訪れる。「エクサバイト商會」のローレン・リナ・バーグ会長から事業提携をもちかけられたのだ。彼女は、人々が装着していたユニットを死後に回収し、そのデータを大量に集めて再構成することで、動画の「世界史事典」制作を目論んでいるという。まさに「記録」を巡る壮大なビジネスだ。ナカジが依頼されたのは、人脈を生かし、世界史の軸となる有名人たちのユニットを回収することだった。
だが、このビッグ・プロジェクトには順調に滑り出した途端、ユニットの独占メーカーである「グラフィコム」社から待ったがかかってしまう・・・・・・・。
壮大なSFサスペンスですが、ここまで大掛かりなものでなくとも、メガネ装着ユニット+Bluetooth動画送信+スマホなら技術さえあればすぐにも実用化できそうに思います。
もしこれが広まると、めったなことでは理不尽な絡まれ方をされなくなり、装着者自身も紳士淑女に変身できます(笑)。
ちなみにエクサバイトの"エクサ"とは大きな数の表現単位で、現在外付けのHDDは数テラバイトのものが主流と思いますが、"テラ"の次が"ペタ"その次が"エクサ"で、テラの百万倍です。
こういう時代になれば、個々人が生まれてから死ぬまでのすべての映像データを保存することなど朝飯前というわけで、前記作品はそれを集合化して歴史を編纂しようという物語ですが、こんな時代は目前です。
私が入社した時、一番初めに書いた研究報告は「コンピュータ支援教育プログラム」についてでした。当時会社が売っていたミニコンという小さな「電子計算機(笑)」を使って小学生用の教育ソフトを作ったのですが、何しろメモリが最大32KBという今では信じられないほど小さなコンピュータで、画面に表示される問題に生徒が答えると、それを読み取って正しければ次の画面へ、間違っていればヒント画面に遷移するというものです。
杉並区のある学校の協力を得て実験しましたが、もちろん私は先輩の言われるままにごく一部のプログラムを書いただけです。
その後、研究所では企画室という部署に移動になった時、VAXというアメリカ製のミニコンを人工知能用に導入し、追加のメモリを1MB買いました。
両手で抱えるような大きさのボードにびっしりとチップが貼り付けられていて、おおこれが100万バイトかぁと感動したものです。32KBの30倍以上ですからね。
それが今ではスマホですら数GB、つまりVAXのまた1000倍の容量のメモリを積んでいるわけですから、メモリ容量の進歩は目が回る勢いです。
エクサバイトの時代は間違いなく来るし、「ウォークレコーダー」もそろそろ製品が登場するのではないでしょうか。
(付記)
その後、こんな記事を見つけました。facebookがスマートグラスを作っているそうです。
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