三石巌さんの一日を調べてみた
三石さんの90歳頃の一日の過ごし方は、大体こんな具合だったようです。
ベッドに入るのは午前〇時。「ボクはその日の最初のニュースをラジオで聞いてから眠りにつく」とあります。
夜中に一遍はトイレに起きます。その時、「原稿のこと」を考えるそうで、そのうちに眠くなれば寝るとのこと。眠れなければ、枕元のラジオで午前五時のニュースを聞き、ついでに「人生読本」だの「心の時代」だのを聞くそうです。
私の母も、枕元にポータブルラジオを置き、聞いていてもいなくても何か鳴らしていたのを思い出しました。あの頃の人はラジオが一番しっくりくるメディアだったのでしょうか。
ベッドを離れるのは七時半。
起きたらすぐ風呂に入るそうです。これは目を覚ますには最高の方法で、私もそのような生活をしたいと思ったことがありますが、一日二度も風呂に入るのは、流石に小原正介さんになりそうで実行していません。三石さんは裕福なんだと思います。
風呂の中では、独自のアイソメトリックトレーニングで筋肉を鍛えていたそうです。
たとえば、バスタブの中で両膝を立て、膝頭を両方に開いて力一杯壁面を押す・・・などです。
我が家では、ジムに行かない家内がこれをやっています。
それ以外にも、いくつか健康器具(ステッパー、エアロバイク、ボートこぎ、ブルワーカーなど)を持っておられて、一日に30分ほどやっていたそうで、私が娘さんからいただいたメールにも父はよく体を動かしていたとありました。しかし、一日のどこでやっているのかはよくわかりませんでした。
風呂から出ると、台所でミキサーを回して特製ジュースを作り、朝食がわりとします。
ジュースの中身は
- バナナ
- 牛乳
- メグビープロ(プロテイン)
- 温泉卵
- 水溶性ビタミン類(B、Cなど)
- オリゴ糖(食物繊維)
- 核酸
- 抹茶
お茶やコーヒーは飲まないとのこと。
三石家ではテレビは「命取り」:命=時間だから、時間泥棒という意味・・・なのでリビングにはなく、台所に小さなのが置いてあり、ジュースを飲む時にチラ見する程度だそうです。
それから「音楽室」に行って手製のパイプオルガンを弾くそうで、そのことからバッハのコラールなどを弾く哲学者の森有正さんを連想しましたが、なんのことはない、「ラ・クンパルシータ」や「奥様お手をどうぞ」などらしいです(笑)。
それから書斎にこもって原稿書きに専念し、正午になると昼食となります。
火、木、土、日は自分で缶入りスープ(コンソメ、トマトスープ、フレンチオニオンスープなど)を飲むだけですが、チーズやクッキーを食べることもあるそうです。
しかし、月、水、金は二人の料理が得意な家政婦さんが来て、食事を作ってくれるそうです。経済力があるから、こんな真似ができるのでしょう。
朝と同じジュースの後、具入りおにぎりと五菜程度のおかず(彼は山海の珍味と言っている)を食すそうで、90を過ぎてこれだけ食べられるのは健啖と言って良いと思います。
水曜日には、専属のマッサージ師が来てマッサージをしてくれるそうです。
これもすごいことです。
そして、家政婦さんとマッサージ師さんを加えて四人で話に花を咲かせるのだそうです。
話題は栄養に関するものが多く、さながら小さな「三石栄養教室」と言ったところでしょうか。
この「教室」はそのまま午後のティータイムに流れていき、マッサージ師さん持参の餅菓子を食べながら談論風発の趣きがあります。
お茶の後、音楽をやることも多いようです。
家政婦さんやマッサージ師さんの来ない火、木、土、日は、再び書斎にこもって原稿書きとなります。
書斎にはベッドがあり、そこで横になったり時には眠ったりするそうです。
朝食、昼食、おやつ(第三食)と続き、夜になるといよいよ夕食ですが、これは毎日同じ敷地内に住んでいる娘夫婦の家で食べるそうです。
娘さんと隣同士というのも、本当に恵まれていますね。
夕食後は、再び原稿書きして過ごし、それから日記(一日四百字程度)を書き、午後10時40分ごろにこの日二度目の風呂に入り、風呂を出たらベッドでラジオを聞いてゆったり過ごすそうです。
こうして眺めてみると、彼は研究し、そこで知り得た知識・情報を原稿の形にしたり人に話したりすることが生きがいになっているようで、世間の平均値とは少し異なる価値観で生きているようです。
彼の書いたある本に、「弟子イコール友だ」という一文がありました。
これは私にはよくわかります。
同期の友人は、自分の発見した真理など本気で聞こうとしてはくれないので、どうしても真剣に耳を傾けてくれる弟子の方に気持ちが向くからです。
大学の教え子や自分の会社に集まる健康談義の好きな人たち、地域の知り合い、そして家政婦さんやマッサージ師さんなどが、彼の話を喜んで聞いてくれる弟子であり友でした。
外山滋比古さんは、威張るのは年寄りの生きがいだと喝破しました。
晩年の三石さんは、この「友」との勉強会で(良い意味で)威張ることが生きがいだったと思われます。
今日の夕食はパエリア。
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