隠れ家

写真を整理していたら、マロンが出てきました。

マロンというのはワンちゃんの名前で、モコモコしたマルチーズだったと思います。
麻布十番の小さなお好み焼屋さんの座敷犬でした。

この店はNちゃんという若い女性が一人で切り盛りしていて、可愛くて男好きのするタイプだったので夕刻になるとファンのお客でいっぱいでした。
私は会社帰りによく立ち寄ったのですが、行くとすぐ電話である女性を呼んでくれるので困りました。この女性は私にこの店を紹介してくれた人で、麻布十番に住んでいてNちゃんの親友みたいな人ですが、私といい関係にあると邪推して呼び出すのです。
一度建築家の友人を連れて行ったことがありますが、その時にも彼女が登場し、後で友人に大いに冷やかされて弱りました。

ですが、私はいつもはそこでただビールを飲み、お好み焼を食べ、そしてマロンを撫でて過ごしていただけです。黙っていると、ちょっとした小料理をサービスしてくれることもありましたが、普段は私が話しかけない限り放っておかれました。
その「注意深く放置されている」感じがとても心地よかったのです。
Nちゃんも「親友の彼(笑)」ということで、私には特別親切にしてくれたみたいで、本当に居心地の良い隠れ家でした。

Nちゃんはバツイチで、小学生の女の子があり、Aちゃんというその子は時々店にやってきてお手伝いをしたりしていました。私はNちゃんに頼まれて、店でAちゃんの勉強(算数)を見てあげたことも何度かあり、楽しい記憶として残っています。

リタイアしてから足が遠のきましたが、今思い返すとあの隠れ家は不思議な世界でした。
元気にやっているといいのですが、コロナで店は閉めてしまったかもなぁ・・・。

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