記憶をGoogleマップで確認する

ヘルシンキを歩いている夢を見ました。

ヘルシンキは仕事で数度訪問している馴染みの場所ですが、どうも夢の中に出てくる場所がはっきりしないので、Googleマップを開いてみました。

まずホテルを探しました。

いつもインターコンチネンタルホテルを利用していて、そこから北に向かって歩いていくと駅があり、その前にストックマンという老舗デパートの茶色の建物があり、その先を左に曲がると熱帯植物の温室などがある植物園がある・・・これが私の記憶です。

ところがインターコンチネンタル・ホテルなどどこにも見当たりません。

ネットで調べると、かつてのインターコンチネンタルホテルは名前が変わってしまったようで、現在はスカンディックパークホテルというらしいことがわかりました。

地図で探してみると、記憶に反してホテルは駅より北の方角にあります。

してみると、ホテルから北に向かうと駅があるというのは記憶違いで、南に向かうのが正しいことになります。

そこでストリートビューでホテルから歩いてみましたが、ストックマンが駅の前にありません。

しばらくウロウロすると、その先に見覚えのあるビルが見えて来ました。

夢の中では途中のビルは都合よく省略されていたようですが、街の空気感は生々しく甦って来ました。

懐かしい！　そう思いました。

今度は、休日に出かけた公園を探しました。

記憶ではホテルから南に行った港の方にあるのですが、これも見当たりません。

書類の保管庫をひっくり返し、その場所が「Seurasaari」という名前であることを突き止め、Googleマップで調べると記憶に反してホテルより北の内海に浮かぶ島のようです。

島？

歩いて行けたはずで、島ではないのだが、と思いながら地図を拡大するとかすかに一本の道が海を渡っています。

それをクリックしてストリートビューで見ると、人が渡れるくらいの細い橋がありました。

橋の写真を見た瞬間、カモメが頭に浮かびました。

左側の欄干に白い美しいカモメが止まっているのを写真に撮った記憶が鮮明に甦って来ました。

それにつられて、途中立ち寄った「シベリウス公園」や、海岸の岩の上で全裸で日光浴している少女たちにドギマギしたことなどが、次から次へと思い出されて来ました。

地理的記憶は長い間に改変されているらしいこと、にもかかわらず、風景の呼び起こす感情の記憶は意外に鮮明に残されていることがわかりました。

気がついたら、あっという間に２時間が過ぎていましたが(笑)。

それにしても、Googleマップのストリートビューは、老人にとっては夢のようなツールです。もはや二度と訪れることの叶わぬ場所でも、マウスひとつで自在に移動でき、昔の自分に出会うこともできます。

旅が好きで、地図を見るのが好きだった亡父がまだ元気だった頃に、これがあったら本当によかったのに、と思いました。