共産主義

 先日、共産党の機関紙「赤旗」に、志位委員長が高校生向けのWEB講演を行い非常に好評だったという記事が出ていたそうです。1万4602人がリアルタイムで視聴したとのことで、高校生のどんな質問にも志位委員長が丁寧に説明した姿勢が特に好評だったそうです(自画自賛)。司会は三浦瑠麗氏(国際政治学者)で、ちょっと意外でした。

政党トップにこれくらいの力量があれば、と自民党支持者は思ったのではないかな。

共産主義は自由世界の多くの国で嫌われている、と思っていましたが、現実には日本を除く先進諸国で若い世代の関心が高まっているのだそうです。
ソ連の崩壊で「共産主義は敗北した、マルクスは過去の人だ」とその当時私たちは思いましたが、その後の新自由主義の浸透で、勝利したはずの資本主義は格差を拡大し、中産階級を没落させ、人々をブラック労働に追いやる悪しきイデオロギーではないかという疑問がふくらんできています。

マルクスはユダヤ系ドイツ人で、労作「資本論」を書き上げたのは亡命生活を送っていたイギリス。しかし、最初の共産主義革命が起きたのは生産力の低い発展途上国の帝政ロシアでした。生産力が高くない新国家ソ連は、共産主義革命を恐れた周囲の資本主義国家から強い圧力を受け、それに対抗するべく生産力の増強に邁進しました。

初めは労働者が自らの力でツアーを倒し国家を掌握したと意気込んでいたものの、きつい労働ノルマを味方のはずの共産党から強制され、しかも働いてもサボっても賃金は同じなため、次第に働かなくなっていきました。そこで共産党政府は国民を監視し、いうことを聞かないものは処刑したり強制収容所送りにしたりして、やがてこの世の天国になるはずだったのが地獄と化していきます。

生産力の非常に高い国家で共産主義革命が起きていれば、このようなことにはならなかったかもしれません。また同様に、周囲の資本主義国家から強い圧力がなければ、国民をノルマで縛るような収容所国家にならずに済んだかもしれません。
歴史のイフです。

さて、このブラックな監視社会は資本主義国側により誇張して報道され、自由のない世界として忌み嫌われるようになっていきましたが、ソ連が崩壊し社会主義が打ち捨てられると、人々はかつての生活を懐かしみ、マフィアが横行し格差が拡大していく新しい社会に否定的になりつつあるとも伝えられています。言われるほどひどい社会ではなかったのかもしれません。
私たちが共産主義や社会主義に否定的なのは、一つにはこのような偏った報道による洗脳があるせいだと思います。そういえば、日本でも共産主義(無産主義)に「アカ」というレッテルを貼って危険思想とみなしてきましたが、体制にとって危険な思想であったのは事実ですが、その時点では共産主義がどんなものか知らない庶民にとってはニュートラルだったはずです。
「アカ」排除は日本人のいじめ好きな気質にはまったのかもしれません。

ネガティブ報道の一つに、共産主義では私有財産が否定され、あなたの財産は全て国家によって取り上げられるぞ、というものがあります。そう言われれば、今のこのわずかばかりの財産すら取り上げられるのか、それは困ると思ったことでしょう。
しかし、考えてみると多くの国民にとって自分の財産は大したものではありません。そして、一つのクローズした社会の中でカネが動く以上、ある人のカネが増えるということは同時に別のある人のカネが減るということですから、普通の国民はすでに最初から(富裕層に)財産を召し上げられている、とも言えるわけです。
世界の99%の側にとっては、とっくに(本来自分たちのものであるはずの)私有財産など取り上げられているのであり、だから26人が世界の富の半分を手にしているのです。

トリクルダウンの前にすでにトリクルアップされている

(堂免信義)

これだけ述べてきても、それでも共産主義は嫌だと思う人が大勢かもしれません。
世界的には資本主義の見直しが進み、共産主義を再考する動きになっているとしても、調査によれば少なくとも日本ではそうです。
その理由として、革命という血生臭い手段に頼るのは反対という人が多いのは当然ですが、さらに日本人は

  • 貧しい人を支えるために、裕福な人ほど多く税金を支払うべきだとは思わない
  • 教育は無料であるべきだとは思わない
  • 無料の医療サービスは人間としての権利だとは思わない
  • すべての住人が無条件のベーシックインカムへの権利を持つべきだとは思わない

と考えているらしいのです。しかもダントツに。
私はここに一種の健全な思考を見るのですが、しかしそれはあくまで現実と釣り合った範囲でなくてはならないわけで、度を過ぎれば冷たい社会に転じてしまいます。

このように自己責任論が日本人の発想の根底に染み付いている以上、日本では共産主義の見直しなど当分起きないと思われます。
しかし、斉藤幸平氏の著書がそれなりに売れていて、3.5%の人が動くだけで世の中は変わり始めるという説があるそうですから、あるいは日本でもそのうち新しい動きが見えてくるかもしれません。

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