吉本ばなな『サウスポイント』と栗本慎一郎の『脳梗塞になったらあなたはどうする』
1.初めて吉本ばななの小説を読みました。家でじっとしていることが多いので、暇つぶしを兼ねての読書です。こんなことでもなければ、彼女の小説を読むことはなかったと思います。
最近、お姉さんの本や吉本隆明とばななの対談本など何冊か読んだので、どんな特異な家庭環境で苦しい思いをして育ったか一応わかっていたため、この作品を読み始めてすぐにその「意味」が理解できたとは思いました。しかし、この小説自体は私にはとても受け入れられないものでした。
多くの小説読者は、登場人物の誰か(多くは主人公)に感情移入して、その彼/彼女が生きる世界を疑似体験し、そのことで心が解放されることをもって価値ある読書体験をしたと思うはずです。その意味では、この作品は私の感情移入を拒むところがあり、終わりまで何の共感も得るところはありませんでした。
この小説は私小説の一種だと思うのですが、主人公のテトラちゃんが若い女性であるということだけでなく、その感性も世界観も私と共有できるところは一つもなく、一言で言うと波長が合わない感じでした。
ただ、作者と近い感性や世界観を持っている人なら、読み進むにつれて「うん、そうそう、ホントにその通り」と感じ、共振して感動の渦に飲み込まれることもありそうに思いました。読者を選ぶ作品だと思います。
2.栗本慎一郎の脳梗塞体験を綴った『脳にマラカスの雨が降る』が面白かったので、「予防・闘病・完全復活のガイド」と副題がついた『脳梗塞になったらあなたはどうする』を読んでみました。
今回の腰痛すべり症を体験して、体が動かなくなることの怖さを実感したこともあり、今一番怖い病気は何かと聞かれたら迷わず脳梗塞と答えると思います。しかし、ではそれに備えてあなたは何か手を打っていますかと問われれば、恥ずかしながら何もしていません。本書はそんな私に何か教えてくれるのではないかと期待して手に取りました。
結論を先に言うと、脳梗塞という病気についての知識を得るための簡潔で具体的な手引き書として一読の価値あり、でした。知っているようで知らないこの病気とその周辺(医療体制など)を幅広くリアルに具体的に解き明かしてくれます。
医療体制の批判については彼らしい毒舌ぶりでしたが、発症してからもう20年以上が経過しているので、この辺は少しは改善されているものと期待したいです。
彼が口を極めて注意喚起をしているのは下記の諸点でした:
- 大半の中高年は脳梗塞予備軍である
- 予備軍は脱水してはならない
- 大半の医療機関も医者も知識が足りず失格(当時の話)
- 疑いがあれば脳ドックで自分の脳の様子を把握しておけ
- アスピリンは常用すべし
- 信頼できる病院をあらかじめ調べておくこと
- 救急車ではなく自分の車でそこに連れて行ってもらう
- 動かしても良いからとにかく早く病院へ
- 高血圧は何としてでも下げよ
- リハビリは何年経っても有効
- 絶対諦めるな、希望を捨てるな
ところで、本書に「男は昔の仲間や初恋の人に無性に会いたくなると死ぬ」ということわざが紹介されていました。
ドキッとしましたが、これ本当なのでしょうか。
コメント
私は中高女子校だったので高三の時に男の子と初めてデートをしました。車道側を歩いてくれてドキドキした事。洗面所に行くことが恥ずかしくて、言い出せず我慢をしてさよならの後に駅のトイレに駆け込んだ事を覆い出しました。懐かしいですが、会いたくはないですね。
あずきさんの思い出も甘酸っぱくて胸キュンですね!
でも今会うと、その記憶が書き換えられてしまうのは間違いないでしょう。
とはいえ、会ってみたい気持ちがゼロとまでは言い切れません。死後の世界をのぞいて見たいというのと似た気持ちかもしれませんが(笑)。
ただ、最近になって(初恋の人ではなく)昔の友達に無性に会いたくなることが何度かありました。だからあそこを読んでドキッとしたわけです。「その時」が近いことを無意識に感じ取っているのだと思います。