アッバードのマーラー
YouTubeでマーラーの交響曲の素晴らしい演奏を見つけました。
クラウディオ・アッバード/ルツェルン祝祭管弦楽団によるものです。
アッバード(Abbado)の演奏にははるか昔、彼がウィーンフィルを率いて来日した時に初めて接しました。今でも忘れられませんが、アンコールで演奏したバッハのアリア(G線上のアリア)がなんとも表現しづらい名演で、聴いている自分の体が空中浮揚しているかのように感じられたほどでした。
だから彼が名指揮者なのはよく知っていましたが、今回マーラーを聴いてこれほどだったとは!と驚きました。
動画ですから、各楽器の演奏者の演奏ぶりを見ることができますが、いずれも素晴らしい技巧の持ち主ばかりです。調べてみたら、このルツェルン祝祭管弦楽団というのは、スイスのルツェルンで開かれる音楽祭の期間だけ各地から演奏家を集めて結成されるオケで、遠くベルリンフィルの楽団員やソリストとしても超一流の演奏家が参加しているのだそうです。
下に交響曲第四番の演奏を貼り付けておきますので、よかったらご視聴ください。
この曲はクレンペラーの指揮するフィルハーモニア管弦楽団のものがこれまで最高と思ってきましたが、今回アッバードを聴いてこちらの方がより素晴らしいと思うようになりました。
マーラーのシンフォニーはどれも長大ですが、美しさを聞きかじりしたい場合は第三楽章アダージョだけでも良いと思います。その場合は、26分10秒あたりまで進めてからとなります。
辻邦生さんは、亡くなる少し前、(愛宕山の中腹に立てられている)軽井沢の別荘で午前中はグレン・グールドのバッハを聴きながら原稿を書き、午後になると西側に開かれた窓から日が暮れるまでじっと外を眺めながらマーラーのシンフォニーを聴いて過ごすのが日課だったと、奥様の佐保子さんが書いていました。
マーラーの何番をよく聴いておられたのかはわかりませんが、昔お会いした頃はワグナーを愛聴していたそうですから(奥様曰く、主人は洞窟の奥で火がチロチロしているのが好きみたいです)、死の間近に迫っていることを知っていたであろうその頃は、かつてより一層滅びの美学に共感していたのだと思われます。それなら、きっとこの四番とか五番あたりを流していたのではないかと想像します。
そんなことを思いながら、この曲の中にどっぷり浸かって一時を過ごしました。
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