古代の日本とユーラシアとの関係が気になるわけ
私がなぜ古代の日本とユーラシアとの関係について興味を持っているのか、という理由です。
2006年も押し詰まった頃、与謝野達(とおる)さんから一冊の本が送られてきました。
『ラテン語と日本語の語源的関連』と言うタイトルで、日本語の中に相当量のラテン語が紛れこんでいるのではないかと言う説を、たくさんの例を挙げて述べている本でした。
与謝野さんとは現役の頃からのお付き合いで、あるテーマについて日立で研究支援してもらえるかどうか相談にこられた時、私が同席して対応して以来の関係です。
当時、うちの子が与謝野兄弟の母校である麻布に通っていたこともあり、それ以来親しくしていただいてきました。
言葉というものに強い関心を抱くのは、それが一種の情報化石として古い時代の記憶(メモリー)を保存しているからで、もしラテン語が日本語に入り込んでいるなら、ローマ帝国に居住していたある部族と日本人とがどこかで共に暮らしていたということになります。
ただ、日本人が過去のある時期、ユーラシアを流浪していたという事実はありませんから、結局ローマ人(ローマ帝国内に居住しラテン語を話していた部族)の集団が日本に移動して来たということになります。
もちろん、はるか大昔にそこから日本人とローマ人に枝分かれしたような共通の祖先がいたという仮説もあり得ますが、与謝野さんはこの本の中で、混じり込んでいるラテン語の古さやその変化を調べると、そうではないと明確に述べています。
西暦2世紀以降のラテン語が対象になるのだそうで、その頃の日本は弥生時代です。
しかし、そんな時代に、果たしてはるか西方からわざわざ日本にまで移動してくる部族がいたのか?
また、そんなことが果たして可能なのか?
これが一番の疑問でした。
当時のローマ帝国の版図がこれですが、あるいは例の古代ユダヤ人が日本に来たという説が関係しているのかも知れないと思ったりもします。
ローマ帝国下のユダヤ人は、ヘブライ語だけでなくラテン語も話していたからです。
今回調べた範囲では、その当時カスピ海からインドにかけてパルティア帝国があり、その隣がローマ帝国であり、北ユーラシアには匈奴がいて鮮卑の登場で西に移動し、4世紀のフン族のヨーロッパ侵入をまさに引き起こそうとしていた、世界史の大変動前夜の時代です。
わかっている範囲では、それから少し後に、秦氏が大月氏から日本に来ていますし、後に蘇我氏も同じルートで東北日本に降り立っています。
西暦2-4世紀頃にラテン語を話す部族が大挙して草原のハイウエイを通って日本に来ることは、決して不可能ではなく、むしろ世界史の大変動に伴ってそのような移動があるのは当然という感じすらします。
はるか遡ること縄文時代ですら、北ユーラシアと日本との間で交流があったと言われています。
また、大和地方には大和三山がありますが、耳成山、畝傍山、天香具山はその山頂を結ぶと完全な二等辺三角形になり、その頂点の畝傍山から東の三輪山(の山頂より南に下った磐座いわくらと呼ぶ神の座)を結ぶと綺麗な二等辺三角形の中線になります。
その線を西側へ延長すると、すぐに忌部山山頂になります。
この線は古代から世界各地で使われている「冬至線」(夏至の日の出の位置と冬至の日の入りの位置を結ぶ線)とぴたりと一致します。
自然にこうなったとはとても思えません。
山を作ったか山頂を動かしているのです。
(国土地理院の地図上に自分で作図して見たのがこれです。)
ここで驚くのは、この直角三角形の三辺の比が5対12対13になっていることで、これはメソポタミアの建築で聖なる部分に用いられた比だそうです。
この時期にすでにメソポタミアから人が日本に入って来ている可能性があると言うことです。
であるならば、2-4世紀頃に古代遊牧民や秦氏や蘇我氏が草原ハイウエイを経由してローマから日本にラテン語を持ち込んだと言うことも十分ありうると思います。
与謝野さんは本書の後書きで、新羅の遺跡からトンボ玉など多数のローマの装飾品が見つかったことを記した本
由水常雄『ローマ文化王国-新羅』2005
を引用して、ラテン語が日本に入っていることにますます自信を深めたと述べています。
実際、びっくりするほど日本語とラテン語の間には類似点が多いです。そして与謝野説では、単にラテン語由来の単語が日本語に紛れ込んでいるのではなく、日本語、それも大和言葉のルーツがラテン語であるという驚くべき主張でもあります。
これについては長くなるので明日に回します。
その後、与謝野さんがレジオンドヌール勲章を授与されるなど、あまりに偉い人になってしまわれたので疎遠になっていましたが、最近また少しコンタクトがありました。
そして、一つ宿題をもらってしまったのですが、これについてはそれを仕上げた時にまた触れることになると思います。
でも、難問であるし、私の能力では一体いつになるやら・・・。
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