書で涼む

「書」に興味を持つようになったのは、森下典子さんの『日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ―』を読んで以来です。あの中で、森下さんが紹介していたエピソードの一つが、茶道具としての掛け軸でした。

梅雨明け直後の猛暑の日、森下さんは先生のお宅に伺い、稽古場に入ります。
床の間の掛け軸に目をやると、「瀧」という一文字が書かれています。
一瞬、水しぶきを顔に感じ、

(あー、涼しい)

と思います。
そして次の瞬間、彼女はこれまで難しいものと思っていた掛け軸を理解できたような気がしました。

その時、私の目から、分厚いウロコがポロリと落ちた。
(あっ! 掛け軸ってこういうものなのか!)
難しくてわからないという思い込みが、いっぺんに吹き飛んだ。
文字を頭で読むのではないのだ。絵のように眺めればいいのだ。
(なぁ~んだ)

その掛け軸がこれです。
宮西玄性筆。
表具も立派ですが、書が実にいいです。

宮西玄性筆


ちなみにこの人(明治生まれ)の書はいくらくらいで手に入るか調べてみたら、書にもよりますが、掛け軸の形で数万円くらいからあるようです。
思ったより手頃でした。

以来、時々ネットで書を眺めたり、書に親しんでいる人のホームページを読んだりしていましたが、とうとう若い書家の人の作品を買ってしまいました。

藤谷仙洞さんの作です。
掛け軸なしの書だけです。

茶室もないし、床の間もないので、どのようにして鑑賞しようか考えましたが、とりあえず私が好きな時に眺められるよう、書棚のガラス扉の内側にそっと貼りました。



水しぶきとマイナスイオンを浴びてご機嫌です(笑)。
外は暑い夏です。




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