リビングラボについて(辛口)

リビングラボについてディスプレイさんからご紹介があり、どんな活動なのか調べ始めましたが、いろいろ疑念が湧いてきてもう止めました。
一言で言うと、使い物にならない発想だと思ったのです(失礼)。

まず、リビングラボの紹介文を読んでうんざりしました。

当事者の日常的な生活環境の場でオープンイノベーションを起こす共創(Co-Creation)の仕組みのこと

これを読んですっと頭に入る日本人はいないと思います。
大和言葉で書けよ。

紹介記事には、リビングラボは北欧生まれとあったので、これを推進しているらしい「北欧研究所」と言うサイトの紹介記事を読もうとしたら、なんと有料!
広く知ってもらおうと言う姿勢がありませんね。

続いて、川崎にもリビングラボがあると言うのでそれを調べてみました。
これはなんと経産省(産総研)がレポートしているので、役所が予算をつけて進めているプロジェクトのようです。
しかし、その中身は呆れたもので、要するにメーカーからいろいろな器具、たとえばべッドセンサーとか難聴対策用スピーカー、ロボットなどを提供させ、それを介護施設で使わせて評価をフィードバックさせるというものですが、これは産学協同好きの役所がやりたがるいつものパターンですね。

興味深かったのは、かかわった企業のスタッフの自己評価がプロジェクト開始前と比べて軒並み下がっていたことで、「こんなはずじゃなかった」「まだまだだなあ」と言う感想だったと言うことでしょう。
とくに"あなたは,自ら課題解決に関わりたいという思いが,どの程度あると思いますか(課題解決意欲)"という項目は参加後は軒並み低下していました。
難しすぎる、これ以上関わりたくない、ということなのかな。

介護スタッフからは「現場の負担が増えた」と言う苦情めいた感想もありました。そりゃそうでしょ。忙しいのに使いたくもない新しい「便利な」器具を使わせられ、訳のわからぬことをあれこれ説明されてうんざりしている姿が目に浮かびます。

報告書では、成果を出すためには"気づきを触発し橋渡し役となるファシリテーターが必要"と書かれていましたが、またこれか、と言う印象でした。何かというとファシリテーターなるわけのわからない職務を持ち出して、そこに全ての困難を押し付けるのが、この種の輸入プロジェクトの常套手段です。
この川崎プロジェクト、失敗とは書かれていませんが失敗に近いのではないでしょうか。

その他の実施例ものぞいてみましたが、どれも難しいカタカナ言葉満載で、とても地域に根差した活動に発展するとは思えませんでした。
「ABC理論」が元になっているそうですが、聞いたことあります?
やっている人も、飛びついてはみたものの思ったような成果が得られず、テンションが下がっているのではないかな。

また、おかしいと思うのは、これらのプロジェクトにホンモノの社会学者(小室直樹級とまでは言いませんが)が参加していないらしいことです。工学畑の人だけでは手に負えないんじゃないかな。

志やよし、されど無理筋・・・これが私の総括です。

思想の輸入業者と「やってる感」を出したい役所、お付き合いしている企業、そしてカタカナ言葉で「フレームワーク」を作って論文を書き自分の業績にすればそれで満足するエセ学者の共同作業で、巻き込まれた利用者が迷惑していると言うのがリビングラボの実態でなければ幸いです。


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