ラン十三日目/遠藤甲太さん

一昨日と昨日は(それぞれ雨と通院のため)ランを休みました。それでも、軽いウォーキングはしているので(各3kmずつ)、以前のように一日家でゴロゴロしていたわけではありません。
今日は久しぶりに、というほどではありませんが、再び走ってきました。
結果は……キツかった!
それでも過去最高のスピードで走れたみたいです。体を休めたのがよかったのかな。

【今日のラン】
距離:2.03km
インターバル:歩き-走り780m-歩き-走り420m-歩き
最高時速:10.6km
最大心拍数:137bpm


本棚を見ていたら、
 遠藤甲太『山と死者たち』
が目に止まりました。
懐かしい!

彼は私と一才違いの(本格的な)登山家で、谷川岳の一ノ倉沢アルファルンゼを冬季単独初登攀するなどの輝かしい記録の持ち主です。
この快挙は、正直に言えば半分狂気の沙汰のクライミングで、命が無くならなかったのは単なる偶然だと思います。もっとも、このルートは冬にはほとんど雪に埋もれてしまうので、彼の登ったのは僅かに残った氷壁部分だけだと批判する人もいます。それでも、雪崩の巣のようなこのルンゼに挑んだガッツだけでも大したものだと私は思います。

彼とは一度だけ会ったことがあります。
友人のK君が経営する原村のペンションでのことで、その時すでにこの本は出版されていました。

私は彼に著書を読んだことを告げ、これまでに読んだ山の本とは一線を画す素晴らしい本だと思ったと賛辞を述べました。そこでやめておけばよかったのですが、褒めるつもりで「普通は人に隠して見せない自分の内部をさらけ出した吐瀉物(ゲロ)のような」と言ってしまいました。
その瞬間、彼の顔が引き攣ったのでしまったと思いましたが、後の祭りでした(笑)。

いずれにせよ、先鋭的なクライマーにして著書まである遠藤さんは、仰ぎ見るような存在でしたが、さらに驚いたのはペンションに置いてあるピアノでショパンを弾いてみせたことです。
そして、本人は自分を詩人と定義していました。
クライマー、詩人、ピアノ弾き、著作家・・・凄すぎます。
こういう人は当然ながら孤高の存在であり、結婚などせずにどこかの山で遭難死するに違いないと思っていましたが、今日あらためてネットをチェックしたら、子供までいて71歳で亡くなっていたことを知りました。年齢から考えると多分病死と思われます。

本の裏表紙に一問一答が掲載されています。詩人としての面目躍如です。(問いの部分はル・クレジオのものだそうです。)
少し引用します。

なぜ人間は爆発しないのでしょうか?
それが眼玉で、いつも我々を冷たくみつめているからでしょう。
なぜ万年筆のキャップには小さな穴があいているのでしょう?
気圧の変化に応ずる為だと思います。
なぜマッチの先は赤いのでしょうか?
ンデルセンの絵本に似合うからです。
醜さとは何ですか?
自分の醜さに気づかないことです。
百万年後には何があるでしょうか?
鉱物の支配する世界。有機質、まして生命形態というものは宇宙にとって本来不自然なものだと思いますから。
あなたは暗闇にいると怖いですか?
いいえ逆に安心しますね。
あなたは自分が生きていると感じますか?
たいていは忘れています。
いったいどうして無限はありうるのでしょうか?
思考の速度によるのでしょう。
どこに神はいるのですか?
ことばのない処に、もしかしたらいるかもしれません。
いったいどうすれば何も考えないでいられるでしょうか?
自らすすんで生と死との境界あたりをさまようことです。なかなか美しい時間ですよ。
あなたは自分が誰か知っていますか?
あなたの視線に、愛撫に、とらわれたものです。
あなたは飢えで死ぬ人たちがいることを知っていますか?
知っています。………知っていません。
もしあなたが王様だったら、何しますか?
ひげをはやしてまずは最高のワインを毎日呑むでしょうね。

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